病院を選ぶように、薬局も選んで下さい

ナイアシン

 ドラッグストアの店頭で、あるサプリメントの表示をじっと見ているお客様。こんな質問を受けました、「これ、ニコチンが入ってるみたいなんですけど、からだに悪くないんですか」。
 確かに、タバコに含まれるニコチンは、からだにさまざまな悪影響を及ぼす有害な物質です。しかし、サプリメントに入っているのは、「ニコチン酸」または「ニコチンアミド」。ニコチンとよく似た構造をもっているので、名前だけを見れば親戚のようですが、その作用はまったく異なります。

 ニコチン酸とニコチンアミド。最近は、この二つを総称して「ナイアシン」と呼ばれるようになりました。ビタミンB群の一種とされ、体内ではトリプトファンというアミノ酸からつくられます。
 日本で普通の食生活をしていれば、ナイアシンが不足することはほとんどありません。でも、アメリカやヨーロッパの一部の地域では、ナイアシンの欠乏によって起こるペラグラ(皮膚炎を中心に、下痢、認知症様症状がみられることもある)が問題となったことがありました。
 これは、主食としていたトウモロコシに、トリプトファンがほとんど含まれていなかったため、と考えられています。
 このことからもわかるように、ナイアシンは私たちにとって欠かせない栄養素。食事から摂った糖分や脂肪分、タンパク質をエネルギーに変え、皮膚や粘膜を健康に保ち、末梢の循環を改善し・・・と地味な存在ながら、大切な役割を担っているのです。
 実際、ナイアシンの二つの成分はそれぞれ、医療用の医薬品として、口角炎や口内炎、接触皮膚炎、湿疹、メニエル症候群、耳鳴り、難聴、手足の冷え、凍傷など、さまざまな症状に用いられています。

 ニコチン酸とニコチンアミドはほぼ同じような作用をしますが、違うところもあります。ニコチン酸には末梢の血管を広げる作用があるのです(ニコチンアミドにはない)。そのため、人によっては、血管が広がる作用から顔が赤くなる・ほてる・皮膚がひりひりするといった症状がみられることがあります。血管拡張作用をもつ高血圧治療薬を服用している人では、同じ作用が重なるため、血圧が下がりすぎてしまうことも考えられます。
 詳細は不明ですが、血糖値を下げる薬、コレステロールを下げる薬などは、ニコチン酸との併用で作用が強く出たり、副作用があらわれやすくなったりする可能性も指摘されています。
 ナイアシン→ニコチン→タバコが体にいいなんて勝手に解釈しないで下さい。「あれって」思ったら、ぜひ、そばにいる薬剤師を利用して下さいね。

 トにナイアシンを加えるか、と気持ちが動くかもしれませんが、ビタミンB群は、どれか一つだけが不足することはなく、他のビタミンB群も不足していることが考えられます。摂取を考えるのであれば、ビタミンB群やマルチビタミンなどで、バランスよく摂るようにしましょう。