亜鉛

 薬をのんでいたら、味がよくわからなくなってきた・・・そんな経験はありませんか。
 すべての原因が薬にあるわけではありませんが、実に多くの薬剤で、副作用として「味覚異常」が起こることが知られています。 薬剤と亜鉛が一緒にあると、薬がカニのハサミのようには亜鉛を挟み込み、そのまま一緒に体の外に排泄されてしまうのです。そのため、体内の亜鉛は不足することに。その結果、細胞の新陳代謝がスムーズに行われなくなって、新しい味蕾細胞(舌の上にあり、味を感じる細胞)もつくられなくなるために、味覚異常が起こるのではないかと考えられています。

 この他にも亜鉛は、多くの細胞や酵素の働きに不可欠な存在であり、亜鉛が不足すると、傷の治りが遅くなることも知られています。生殖機能にも関与しているともいわれ、最近は、強壮・強精作用を期待したサプリメントとしても人気を集めています。
 亜鉛は「ジンク(zinc)」と表記されることもあり、カキ(牡蠣)肉エキスも亜鉛を豊富に含むものとして知られています。

 亜鉛をサプリメントで補給するときに注意したいのは、亜鉛だけを摂取し続けると、ミネラルバランスが崩れ銅が不足することにある可能性があることです。亜鉛と銅は互いに拮抗関係にあるため、亜鉛だけを多く摂り続けると、銅の吸収が抑えられて、銅欠乏による貧血が引き起こされることがあります。
 このような関係は、カルシウムとマグネシウム、亜鉛とセレンなどでも知られています。何らかの目的があってサプリメントを摂取する場合でも、特定のものだけを長期にわたって摂ることは避け、他の栄養素とのバランスを考えながら摂るようにしましょう。

 亜鉛は、アルコールやコーヒー、フィチン酸(玄米などに多く含まれるイノシトール6リン酸)などによっても吸収が抑えられることが知られています。テトラサイクリン系抗生物質やニューキノロン系抗菌薬、ビスホスフォネート系の骨粗鬆症治療薬などの薬剤との同時摂取でも吸収が妨げられ、薬剤の十分な効果が得られなくなることがあります。
 薬剤服用中のサプリメントは避けることが望ましいのですが、どうしても摂取が必要な場合は、2~3時間ずらして摂取を。詳細は、医師・薬剤師に確認して下さい。