サイリウム

 道端に生えている雑草。その茎を輪にして相手の茎と交差させ、ギシギシと引っ張り合う・・・小さいころ、そんな遊びをしたことはありませんか。草相撲ともいわれるこの遊びの“力士役”となっていたのが、オオバコです。
 地面にがっちりと根を張り、人や車の通りが激しいところにも育つところから「車前(シャゼン)」という別名をもち、利尿作用や去痰作用を期待して、漢方薬にも配合されています。

 生命力の強いオオバコは、世界各地に広く分布しています。中でも、西アジアやヨーロッパにみられるオオバコ科の植物(プランタゴ・オバタ、プランタゴ・プシリウムなど)については、その種子・種皮が「サイリウム」とも呼ばれ、古くから便秘の民間薬として用いられてきました。 サイリウムは食物繊維の一種で、水分を含むとゼリー状となり、大きく膨らむ性質をもっています。これが腸を刺激して蠕動運動を活発にするとともに、便の量を増やし、便をやわらかくすることで排便を促すといわれています。
 このため、市販の便秘薬や「おなかの調子を整える」特定保健用食品、ダイエット補助食品などに配合されているほか、最近では、コレステロールの吸収を抑える作用があることも確認され、「コレステロールが気になる方に」と表示した商品もあります。

 実際に便秘薬としても用いられる成分ですから、他の便秘薬と併用すると、お互いの作用が重なり、腹痛や下痢などを起こすおそれがあります。便秘に対する効果は比較的おだやかともいわれますが、ストレスや緊張など、精神的な要因が関係している便秘の場合、サイリウムなどの食物繊維の摂りすぎは、逆効果になることもあります。症状が改善しない場合は、早めに医師や薬剤師に相談してみて下さい。
 また、サイリウムをたくさん摂取すると、ジギタリス製剤などの薬剤が十分に吸収されず、作用が弱まったり、長期にわたって摂り続けると、脂溶性ビタミン(A・D・E・K)や葉酸、ミネラル(鉄、カルシウム、亜鉛など)といった栄養素が欠乏したりすることも考えられますから、注意が必要です。

 サイリウムを含む食品には、ゼリー飲料やコーンフレーク、スナック麺など、さまざまなものがありますが、十分な量の水分とともに摂らないと、効果が得られないばかりでなく、のどや食道などにとどまってしまい、危険です。特にお子さんやお年寄り、飲み込みに障害がある人の場合などは、この成分の摂取は避けるようにしましょう。