キャッツクロー

 今年3月に行われたサッカーのキリンチャレンジカップ2007、日本対ペルー戦。テレビ画面に大写しになったペルー国旗に、1本の木が描かれていることに気づきました。
 調べてみると、これはキナの木。マラリアの特効薬であるキニーネは、キナの樹皮から得られます。人類をマラリアから救ったキニーネ。それによってペルーが経済的にどれほど潤ったか・・・国旗に描かれていることからも想像ができますが、その後は薬として合成されるようになり、キナの木は一つの役目を終えたようです。
 そのキナに代わる植物として、ペルーの人たちが期待を寄せているのが、キャッツクロー。キナと同じアカネ科の植物で、小枝の根元のあたりから、ゆるくカーブしたトゲが出ているところから、「Cat’s claw(猫の爪)」と呼ばれるようになりました。
 インカ帝国の時代から、痛みに効く民間薬として利用されてきたと伝えられ、元大統領のアルベルト・フジモリ氏は、麻薬に代わる作物として、キャッツクローの栽培を推進していたほど。近年は日本でも、徐々に知られるようになりました。
 キャッツクローの樹皮に含まれるアルカロイド(植物中に存在する、窒素を含んだアルカリ性の物質の総称。薬として利用されているものも多い)には、関節などの炎症をしずめ、炎症をやわらげる作用があるといわれています。免疫系を刺激し、免疫機能を正常化させる働きがあるともいわれ、「関節リウマチによいサプリメント」ともいわれています。
 ただし、関節リウマチには正しい診断と適切な薬物治療が不可欠です。できるだけ早く治療をすることが何より大切です。治療の開始が遅れて症状を進行させてしまわないためにも、関節の痛みやこわばりなどが気になるときには、早めに受診されることをおすすめします。
 キャッツクローについては、多くの薬剤と相互作用の可能性があることも知られています。私たちがのんだ薬の多くは、酵素の作用によって、からだに無害なものに変えられ、排泄されていきます。キャッツクローには、CYP3A4と呼ばれる酵素の働きを抑える作用があるとされるため、同じタイプの酵素で代謝を受け作用を無くす薬剤の代謝も抑えられる可能性があるため。薬の作用が強まったり、副作用が出やすくなったりするおそれがあります。この酵素で代謝される薬剤はたくさんありますから、のんでいる薬があるときには、必ず医師や薬剤師に相談して下さい。免疫系に何らかの作用を及ぼすことも考えられますから、免疫抑制作用をもつ薬剤との併用も避けたほうがよいでしょう。