豆鼓エキス

 甘納豆はご存知ですよね。 では、塩辛納豆は?
 遠州地方(静岡)の浜納豆、京都の大徳寺納豆などが、代表的なものらしいのですが、産地の人以外にとってはあまりなじみがありませんよね。名前に「納豆」とはついているものの、私たちがふだん食べている納豆とは、見た目も、味も、作り方も、まったく異なるもののようです。
 まず、納豆菌を使いません。大豆を麹菌で発酵させ、次に塩水に漬けて熟成させ、さらに天日に干して乾燥・・・とできあがるまでに数ヶ月を要します。丁寧につくられた塩辛納豆は、糸を引かず、ネバネバもなく、ポロポロとした外見。味はまろやかな塩辛さで、精進料理やお酒のつまみとして食され、調味料として使われることが多いようです。かつては保存食として、戦国武将たちに重宝されました。
 この塩辛納豆は、中国の調味料・豆鼓(トウチ)をお手本として作られました。麻婆豆腐や回鍋肉などの炒め物や煮物などには欠かせない豆鼓、最近は日本でも手軽に買えるようになりました。

 この豆鼓、実は料理以外のところでも、注目を集めています。豆鼓エキスが、「血糖値が気になり始めた方に」すすめられる特定保健用食品の関与成分となっているのです。
 豆鼓エキスには、でんぷんの分解を助けるα-グルコシダーゼという酵素の働きを阻害する作用があり、食後の急激な血糖値の上昇を抑えることが報告されています。錠剤タイプのものもありますが、この成分の働きから考えれば、食事の前あるいは食事と一緒に摂取することが大切であることから、お茶や味噌汁などのかたちで販売されている商品もあります。
 ただし、すでに糖尿病の治療を受けている場合、インスリンの注射や血糖を下げる薬剤を使用・服用している場合は、要注意。併用すると、症状が強くあらわれ、低血糖を起こす心配があります。また、同じα-グルコシダーゼを阻害する成分は、食後過血糖防止薬として医療現場でも用いられています。これを知らずに一緒に摂取してしまうと、成分が重複し、強い腹部膨満感や便秘などが起きるおそれもあります。
 あくまでも、「血糖値が気になり始めた方」の食品ですから、すでに治療を受けている場合は、自己判断での摂取は控え、どうしても試してみたいときは、医師や薬剤師に相談するようにして下さい

 豆鼓エキスは、豆の種類、麹菌の種類など、研究に研究を重ねた末に得られたものです。いうまでもないことですが、キッチンにある調味料の豆鼓や塩辛納豆をなめても、効果はありません。塩分の摂りすぎが心配になるだけですから。やめて下さいね。