セサミン

 ゴマ、キュウリ、クルミ、コショウ、この4つの共通点は何でしょう。漢字に直してみると、胡麻、胡瓜、胡桃、胡椒。すべて「胡」の文字が入っていますよね。これは、中国の西方をさす言葉とされ、これらの植物も、そこから中国全土へ、そして日本へと伝わったのではないかといわれています。

 古くから、からだによい食べ物として珍重されてきたゴマ。脂質、たんぱく質、ミネラル(鉄、カルシウム、亜鉛、銅、マンガンなど)、ビタミンB群、食物繊維など、豊富な栄養素を含みます。これだけでも十分なような気もするのですが、最近はさらに、セサミンという成分が注目を集めています。

 セサミンは、ゴマに含まれるリグナンの一種。ほかにセサミノール、セサモリンなどもあります。リグナンというのは、主に種子類に含まれる脂溶性の化合物のことで、アマ(亜麻)の種子(フレックスシード)などにも含まれることが知られています。 豊富な栄養素を含むゴマの中にあって、セサミンの量はごくわずか。ごま全体の50%ほどを脂質が占めるのに対して、セサミンは1%足らず。あの小さなゴマ粒の1%ですから、ごくごくわずかしか含まれていないことがわかります。
 セサミンは、すぐれた抗酸化作用をもつといわれます。しかし、試験管の中での実験では作用は確認されません。体内に入った後、肝臓に運ばれ、そこである種の酵素の働きによって代謝を受けると、抗酸化作用をもつかたちに変換されます。
 抗酸化作用というのは、活性酸素による攻撃を抑えることで、からだのサビつきを抑えること。雨ざらしのクギがさびたり、日の当たるところに置いた油が変質したりすることも「酸化」の現象の一つですが、同じようなことが、私たちの体内でも起こっていて、それが老化や病気につながるのではないかと考えられています。ゴマ油が他の油に比べて変質しにくいのは、セサミンなどのゴマリグナンを含むからなのかもしれません。
 さらに、肝機能の改善、アルコールの分解促進、コレステロールの合成・吸収の抑制などの作用もあるのではないかと期待されています。
 特に問題となるような相互作用は知られていませんが、ビタミンEと一緒に摂ることで、抗酸化作用が増強され、ビタミンEの作用も持続するといわれています。

 胡弓(こきゅう)や胡座(あぐら)にも「胡」という字が使われていますが、同じ由来なのでしょうか。とすると、「胡散臭い」も? これについてはいろいろな説があるのですが、「胡散とは香辛料の一種で、お酒に酔ったような状態にさせる」という記述がありました。さすがにこれは、胡散臭い?