αリポ酸

 「肌にハリ、ツヤ、潤い」「肌のエイジング対策に」・・・。今年、新たに発売された化粧品に中には、こんなキャッチフレーズがつけられたものがあります。肌のカサつきや目もとの小じわが気になる季節、なんとも心ひかれるところですが、キーワードは、αリポ酸配合。今年5月、化粧品へのαリポ酸の配合が許可されたことを受けての新商品です。

 αリポ酸 ― 聞き覚えのある方も多いかもしれません。
 もともと医薬品として用いられていた成分なのですが、2004年、食品としての利用が認められたことをきっかけに、αリポ酸を配合したサプリメントが続々と登場。「体脂肪を減らす」「中年太りを解消する」などとしてテレビの健康情報番組でも取り上げられ、話題となりました。
 αリポ酸は、私たちの体内、細胞中のミトコンドリアに存在し、エネルギーが生み出されるときに欠かせない物質です。体内でも合成されるのですが、その量は、年齢とともに減っていくことから、αリポ酸の減少が中年太りの一因なのではないかといわれたこともありました。
 確かに、動物実験では、エネルギーの消費量が増えた、体重が減ったなどの報告もあるようなのですが、人間でのデータは不十分。αリポ酸の“ダイエット効果”については、今後の研究結果が待たれます。
 そんなこともあってか、最近は、ダイエットよりアンチエイジング(老化防止)によいサプリメントとして注目されることが多くなりました。αリポ酸は、それ自体がすぐれた抗酸化作用をもち、老化や疾病を引き起こすことでも知られる活性酸素の働きを抑えるといわれています。他の抗酸化物質(ビタミンC、ビタミンE、コエンザイムQ10など)の働きを助けるともいわれます。
 また、体内での糖の代謝を促進したり、インスリン(血糖値を下げる作用をもつホルモン)に対する感受性を改善したりすることなどにより、糖尿病によいとの報告もあります。
 しかし、それらは、αリポ酸を注射で用いたときのもの。サプリメントとして、口から摂取した場合に、どの程度の作用がみられるのかは、まだわかっていません。とはいえ、血糖値に対して何らかの影響を及ぼすことが考えられますから、血糖値を下げる薬を服用している人、インスリンの注射を行っている人などは、自己判断でのαリポ酸の摂取は控えたほうがよいでしょう。

 医薬品としても用いられる成分というと、いかにも効果がありそうで、期待したくもなりますが、純度や含有量、吸収量なども異なるので、そこは冷静に。あまり大きな期待をしすぎないでください。