アスタキサンチン

 バイクやスクーターで有名なヤマハ発動機から、「アスティボ」という名前のサプリメントが発売されています。ただし、商品は、アスタキサンチンを成分とするその1アイテムだけ。
 サプリメントとはまったく関係なさそうな会社なのですが、二酸化炭素(CO2)排出量の少ないエンジンの開発に取り組む中で、CO2を吸収して酸素を出すという植物の光合成に着目。その研究の中で、アスタキサンチンを多く含むヘマトコッカスという藻の培養にも成功したのだそうです。

 アスタキサンチンは、赤い天然の色素成分。カロテノイド色素の一種です。藻類のほか、その藻を食べるプランクトン、さらにそれをエサとしている魚介類などに多く含まれます。代表的なものとしては、エビやカニの甲羅、サケやマスなどの身や卵、タイやコイの表皮(うろこ)など。
 その美しい色から、食品の着色料として用いられてきたのですが、近年、ビタミンEの数百倍ともいわれる抗酸化作用をもつことが知られるようになりました。
 抗酸化作用を一言で言えば、紫外線やストレスなどによる外部の攻撃から、からだを守ること。夏に実をつける野菜(トマトやナスなど)や南の海に棲む魚が、鮮やかな色をしている(カロテノイド色素をもっている)のは、強い紫外線からからだを守るためではないかといわれています。
 人間に対するメリットとして注目されているのが、疲れ目の軽減。コンピュータ作業をした人にアスタキサンチンを摂取させたところ、一時的に低下した視力が回復するまでの時間が短くなったとの報告があります。筋肉を使った運動や仕事をしたあとの疲労回復を助けるともいわれています。
 安全性は高いとされ、現在のところ、医薬品との相互作用でも大きな問題となることはほとんどないようですが、同じカロテノイド色素の仲間であるβ-カロテンやリコペン、ルテインなどと一緒に摂ると、お互いの吸収を邪魔しあってしまうのではないかといわれています。サプリメントとして摂取する場合は注意したほうがいいかもしれませんが、毎日の食事の中で摂る程度の量であれば、逆に、いろいろな食品を、バランスよく、色どりよく摂ったほうが、からだにもよく、食事も楽しくなるのではないでしょうか。

 2007年新語・流行語大賞。1日の最高気温が35℃以上の日を指す「猛暑日」という言葉がトップテンに入っていました。夏野菜もあの暑さから自分自身を守っているのでしょうね。そんな植物の力も借りるためにも、その土地でとれた、季節の野菜をその季節にいただく。大切なことに思えます。