はぶ茶(ケツメイシ)

 「ずっと友だち、だが時はたち、変わりゆく街の中で、ともに育ち・・・」。これは、ケツメイシが歌う『トモダチ』の一節。最近は、卒業式で歌うこともあるそうです。確かにすてきな曲ですが、大勢でヒップホップのリズムを刻むのは、ちょっと難しそうですね。

 グループ名となっているケツメイシは、エビスグサの種子のこと。便秘を改善する生薬として、古くから使われてきました。グループの中に薬科大学出身者が2人いて、「すべてを出し尽くす」という意味をこめて名づけたのだそうです。
 今でも、一般用医薬品の便秘薬にはケツメイシを配合したものがあります。また、健康茶としても、ケツメイシが利用されています。といっても、ケツメイシ茶やエビスグサ茶があるわけではありません。ケツメイシが入っているのは、「はぶ茶」。
 ハブソウの種子を煎じたものが、本来のはぶ茶なのですが、エビスグサとハブソウは、同じマメ科カワラケツメイ属の植物で、外見も作用もよく似ています。このため、昔から混同されることが多かったようで、いつのまにか、栽培しやすく、収穫率もよいエビスグサが、はぶ茶として用いられるようになったようです。現在、日本で売られているほとんどのはぶ茶の原料が、ケツメイシといわれています。これは、偽装ではなく、古くからの慣例のようなものです。
 ケツメイシの作用は、センナと比べると、比較的おだやかで、おなかも痛くなりにくいといわれます。下剤というよりも、便通を整える整腸薬に近い感じで使われることが多いようです。
 しかし、ケツメイシにも、センナやダイオウなどと同じような成分も含まれています。はぶ茶を飲んで、さらにセンナ茶を飲んで、アロエジュースも飲んで、寝る前には便秘薬までのんで・・・なんてことをしてしまうと、強い腹痛や激しい下痢を起こすおそれがあります。一つ一つの作用は弱くても、それが重なると、足し算以上の副作用があらわれてしまうことも考えられます。健康茶やサプリメントであっても、安易な併用は避けましょう。
 中国では、血圧を下げる目的で、ケツメイシが使われることもあるそうです。どのような仕組みで降圧作用を示すのか、詳しいことはわかっていませんが、高血圧の薬をのんでいる人は、あまり濃くして飲まないようにするなど、注意をしたほうがいいかもしれません。

 ケツメイシの『トモダチ』の歌詞は、次のように続きます。「・・・この街から、力溜め、一からのスタート切った、君に幸あれ」。-3月。旅立ちの季節です。