松樹皮抽出物

 万歩計は「歩数計」、ウォシュレットは「温水洗浄便座」、テフロン加工は「フッ素樹脂加工」・・・。商品名(登録商標)を使えない公共放送や新聞などでは、こんな言い換えが行われることがあります。サインペン、ドライアイスなども商品名らしいのですが、すっかり定着してしまって、携帯用水性ペン、固体炭酸と言われてもピンときませんよね。

 松樹皮抽出物はどうでしょう。「何、それ?」という感じかもしれませんが、フラバンジェノール、ピクノジェノールなら、聞いたことがあるかもしれません。
 どちらも、フランス海岸松の樹皮に含まれるポリフェノールのことなのですが、フラバンジェノールもピクノジェノールも登録商標のため、公的には松樹皮抽出物、松樹皮エキス、松樹皮ポリフェノールなどと呼ばれています。
 日本では、松は長寿の象徴。独特の曲線を描く枝ぶりは美しいものですが、フランス海岸松は、ちょっとイメージが違います。大西洋沿岸で、温かい風と日ざしをいっぱいに受けて育つので、かなりたくましい印象です。
 分厚い樹皮には、プロシアニジン類に代表されるポリフェノールが豊富に含まれ、すぐれた抗酸化力をもつことが知られています。
血液の流れを活発にして、手足の冷えや生理痛、エコノミークラス症候群などの血行障害を軽減する、LDLコレステロールや血圧の上昇を予防するなど、さまざまな作用が期待されています。ADHD(注意欠陥多動性障害)の症状を改善させたとの報告もあるようですが、これについては今後の研究の成果を見守りたいところです。
 日本では、最近、松樹皮抽出物をビタミンCやコラーゲンなどと一緒に摂ると、肌によいとして、スキンケアを意識したサプリメントも発売されています。
 今までのところ、重大な副作用や相互作用は問題になっていませんが、免疫を活性化する作用があると言われていることから、免疫を抑える薬剤の働きを邪魔してしまうのではないかとの指摘があります。また、高血圧や高脂血症の治療薬、血液を固まりにくくする薬剤などの作用を強めることも考えられますから、服用中の薬剤がある場合は、念のため、医師に相談されたほうがよいでしょう。

 風の心地よい季節になりました。紫外線はちょっと心配ですが、たまには日ざしをたっぷり浴びてみるのもいいかもしれませんね。