冬虫夏草

 馬(マー)軍団、覚えていらっしゃるでしょうか。1990年代、驚異的な記録で注目を集めた中国の女子陸上チームのこと。コーチの名前(馬俊仁)から、こう呼ばれていました。
しかし、厳しい規律に対する選手の反発にドーピング疑惑も重なり、馬軍団は陸上競技の表舞台からは姿を消すことになってしまいましたが、彼女たちが、健康管理のために摂取していたことをきっかけに、日本でも広く知られるようになったのが、冬虫夏草でした。

 冬は虫で、夏は草で・・・いったいどっちなの?という感じの不思議な名前ですが、実は、どちらも正確とはいえないようで、分類学上、冬虫夏草はキノコの仲間。冬の間、コウモリガなどの昆虫に寄生して、その栄養を吸収しながら菌核(菌糸が集まったもの)を増やします。そして、夏になると、昆虫のからだを突き破るようにして、子実体(キノコの地上部)を伸ばします。
 外観が、冬は昆虫の幼虫、夏はキノコのように見えることから、冬虫夏草。うまくつけたものだと感心します。ただし、キノコといっても、私たちがイメージする傘のような形ではなく、棒状のものが多いようで、お好きな方には申しわけないのですが、かなりグロテスクな外見です。 中国では、古くから、疲労回復や体力増強によいとして用いられてきました。免疫機能を高める、肝機能を改善するなどともいわれ、がんやB型肝炎の患者さんに対する有効性を示すデータもあるようです。
 成分的には、多糖類やステロール類のほか、抗菌成分、ミネラルなどを含むとされていますが、有効成分については不明な点もあり、医薬品との相互作用も明らかになっているわけではありません。
 しかし、その作用から考えると、免疫抑制作用をもつ薬剤(シクロスポリン、ステロイド剤など)との併用は避けたほうがよいのではないかといわれています。相互作用の点からだけでなく、そのような薬剤を必要とする疾患をお持ちの方は、体調が不安定だったり、体力が低下していたりすることも多く、その使用は避けたほうが良いように思います。症状が改善したという声も聞きますが、状態は一人一人異なりますので、使用してみたい方は、医師や薬剤師に相談するようにして下さい。