ハトムギ

 あるオーガニックレストランで見つけた「美肌ランチ」。内容は、サラダ、スープ、ライスまたはパン、そして、デザートのタルト。と文字だけを見ると普通のランチと変わらないのですが、これらはすべて、ハトムギ入り。もちろん、飲み物として、ハトムギ茶も。
 分類学上は、ムギよりもトウモロコシに近いハトムギは、ほんのりした甘味に、もっちりした食感。ヘルシーなイメージも手伝って、近ごろ、ちょっと人気のようです。

 ハトが好んで食べるからハトムギ、という説もあるのですが、古くから、食用・薬用として栽培もされてきたこの植物、1反(約1アール)あたり、8斗(約120kg)も収穫できたことから、八斗麦、ハトムギと呼ばれるようになったともいわれています。
 殻のまま焙じれば、ハトムギ茶になりますが、その殻や種皮を取り除いて乾燥させたものは、「ヨクイニン(?苡仁)」と呼ばれ、漢方薬などの医薬品として用いられています。
 ヨクイニンの成分は、約50%をデンプンが占め、17~18%が蛋白質、残りが脂肪分、ミネラル、食物繊維など。滋養作用のある食べ物としても重宝されてきました。体内の水分の滞りを改善するともいわれ、尿の出をよくする、むくみをとるといった効果を期待して用いられることもあります。さらに、ヨクイニンを含む?苡仁湯や麻杏?甘湯といった漢方薬は、関節痛や神経痛の症状を緩和するとされています。
 日本ではこのほか、いぼにもよいといわれ、肌のトラブルに使われることも少なくありません。ヨクイニンは、一般用医薬品の一成分として、肌荒れや口内炎、便秘に伴う吹出物や肌荒れの改善に、ビタミン剤や便秘薬に配合されていることもあります。
 最近の研究では、ヨクイニンに、抗ウイルス作用、免疫増強作用、抗腫瘍作用などがあることも知られるようになりましたが、有効成分がどれなのかなど、わからない点も多く、今後の成果が待たれるところです。
 ハトムギについては、問題となるような副作用や相互作用の報告はなく、サプリメントとして、お茶として、食品として上手に利用したいものですが、尿が出にくいとき、むくみが気になるとき、いぼがたくさんできたときなどは、早めに受診するようにして下さい。

 「はとむすめ」「はとじろう」は、日本で栽培されているハトムギの代表的な品種です。現在、日本で生産されるハトムギは、年間約700トン。これでも、全体の消費量の1割にすぎないらしく、品質がよく、収量の高い品種の開発が進められているそうです。