エフェドリン

 「漢方薬や薬膳料理にご用心、ドーピング禁止成分含有も」という記事を見つけました。中国では、薬や料理の素材としても使われる素材の中に、世界反ドーピング機関の定める禁止成分が含まれていることがあるため、気をつけること、という内容でした。注意すべき素材の一つとして挙げられていたのが、麻黄(マオウ)でした。

 マオウは、中国北部やインドなどに自生する植物。口に入れると舌が麻痺し、全体が黄緑色をしているところから、「麻」「黄」という字が使われるようになったといわれています。
 主成分は、エフェドリン。気管支を広げて呼吸を楽にし、咳を鎮める作用があることから、一般用医薬品の咳止めやかぜ薬などに、広く配合されています。マオウそのものも、葛根湯や小青竜湯など、多くの漢方処方に用いられています。
 こうした作用は、交感神経を刺激することによって発現します。交感神経は、活動しているときに優位になる神経。忙しく働いているときは、心臓も活発に動きますから、脈は速め、血圧も高め、気分もハイテンションになりますよね。このときに活躍しているのが交感神経で、エフェドリンも同様の作用を示します。ですから、咳止めとしてのんだときも、副作用として動悸や血圧上昇などがみられることも少なくありません。
 エフェドリンはまた、基礎代謝を上げて、体脂肪を燃焼させるともいわれ、ダイエットを目的としたサプリメントに含有されていることがあります。しかし、減量目的でこの成分を使用した人で、脳卒中や心筋梗塞、精神神経症状などの健康被害がみられたとの報告が、複数の国々から寄せられており、中には、死亡した例もあります。
 日本では、サプリメントに用いることはできませんが、インターネットなどで海外の商品を入手することも可能なため、注意が必要です。特に心臓や腎臓の病気、高血圧、糖尿病、甲状腺疾患、緑内障、排尿困難などがある人では、症状を悪化させることがあります。この成分を含むもの(医薬品でも、サプリメントでも)を摂取する場合は、医師・薬剤師に相談して下さい。
 同じ作用をもつ交感神経刺激薬(プソイドエフェドリン、フェニレフリン、トリメトキノールなど)や、心臓を刺激する作用をもつキサンチン系薬剤(テオフィリン、ジプロフィリン、カフェインなど)との併用も避けるようにしましょう。

 北京市内の薬店では、「運動員慎用」(選手は控えて)というシールを、該当する商品に貼って注意を呼びかけているそうです。