雑穀

 家内安全、商売繁盛、無病息災、合格祈願、恋愛成就・・・たくさんの人の、さまざまな祈りが飛び交った初詣。都会ではちょっと忘れられがちかもしれませんが、豊年満作や五穀豊穣も昔から日本人にとって切なる祈りの一つだったはず。

では、五穀豊穣の「五穀」とは? 時代や地方によって異なりますが、一般的には「稲、麦、豆、アワ、キビまたはヒエ」を指すことが多いようです。
このうち稲と麦以外のものは「雑穀」とひとくくりにされ、かつては、まずいもの、貧しいものの象徴のように扱われてきました。しかし、食物アレルギーの方の除去食・代替食などにも用いられるようになり、近ごろでは、現代人が不足しがちな食物繊維やミネラル(マグネシウム、カルシウム、鉄など)を豊富に含むことから、健康によい食べ物として注目されるようになりました。

五穀どころか、七穀米、十穀米、十二穀米などもあるようで、白米に混ぜて炊くだけのものから、レトルトタイプの雑穀粥やスープ、パン、さらにはお茶、お菓子(せんべい、クッキーなど)まで、さまざまな商品が発売されています。
肌をきれいにしたい人には、いぼとりにも用いられるハトムギを、メタボリックシンドロームが気になる人には、高血圧や動脈硬化によいとされる成分を含むソバ米や食物繊維が多いタカキビを、貧血の予防には鉄分を含むアワや赤米を・・・など、体調や希望にあわせてブレンドしてくれるお店もあるようです。

こういったものを時々食べる程度であれば、おなかの調子もよくなってよいのかもしれませんが、主食にするとなると、雑穀に含まれるミネラルが薬の吸収に影響を与えないとも言い切れません。カリウムを多く含む雑穀では、服用している薬の種類によっては注意が必要となることもあります。
治療中の疾患がある人、服用中の薬がある人、医療機関で食事の指導を受けている人は、必ず医師や薬剤師、栄養士に相談を。また、アレルギーが起こりにくいといわれる雑穀でも、アレルギー症状を起こした例がありますから、食物アレルギーの人は、何にアレルギーがあるのかをきちんと調べ、何が入っているのかを確認した上で摂るようにしましょう。

五穀豊穣。ちょっと懐かしい響きもありますが、作物の豊かな実りが支えてくれる私たちの生活、そして生命。食の安全が大きな問題となっている今、自分たちの祈りとして思い出したい言葉のような気がします。本年が皆さまにとって良い年でありますように。