バジルシード

 「満腹30倍」「ダイエットサプリキャンディ」などと書かれた、ピンクや緑の華やかなパッケージ。ドラッグストアなどで、手に取ったことがある方も多いでしょう。キャンディやゼリー、ビスケット、カプセルタイプなど、商品の種類は豊富ですが、満腹にしてくれるという成分の正体は、いずれも黒い粒々のバジルシード。文字通り、バジルの種です。

バジルはシソ科に属するアフリカ原産の植物。葉には、さわやかでちょっと刺激的な香りがあり、香辛料として広く利用されています。バジルの葉を煎じた汁は、腹部膨満感(おなかが張った感じ)によいともいわれています。
江戸時代には日本にも伝えられ、和名は「メボウキ(目箒〈ほうき〉)」。種を水に浸すと、透明なゼリー状のものが種全体を覆い(あまりいい例えではありませんが、カエルの卵のような感じ)、それで目に入ったゴミなどを取ったところから、この名前がついたとされています。

こうした性質が、現代ではダイエットの面で注目されるようになりました。バジルシードは食物繊維が豊富。水分を含むと30倍(バジルシードの種類によっては8~10倍)にも膨らみます。これを、空腹時や食事の前などに摂取すると、空腹感がまぎれ、食事の量も抑えられるというわけです。便秘がちな人では、便通がよくなることも期待できるのではないかと思われます。
ただし、バジルシードを含んだサプリメントを摂るときは、必ず、多めの水で。水分を一緒に摂らないと、十分な"満腹感"が得られなくなるだけでなく、のどにつかえたり、食道にとどまってしまったりするおそれがあります。小さなお子さんやお年寄り、飲み込みに問題がある人などの摂取は避けたほうがよいでしょう。
また、毎日、たくさんの量を摂取したり、「空腹感がないから」と食事を抜くことが続いたりすると、ビタミンやミネラルなどの栄養素が不足し、健康を害してしまうおそれもあります。ダイエット成功のためには、ビタミンB群やアミノ酸などの摂取も不可欠。食べる量をただ減らせばいいというものではありません。

2005年、外国から輸入されたバジルシードにアフラトキシン(発がん性をもつカビ毒)が検出されたことがありました。それ以降、問題になった事例はなく、バジルシードそのものに発がん性があるわけでもありませんから、正規のルートを経て輸入されたものはほぼ安全といってよいと思われますが、インターネットなどで海外から個人的に購入したりするときは、注意が必要かもしれません。