ラベンダー

 放課後の理科室。何気なくかいだラベンダーの香りに、意識を失ってしまう少女。しかし、彼女はそれ以来、タイムリープとテレポーテーション(別の時間・場所に、瞬間的に移動すること)という不思議な力をもつことに―。筒井康隆原作の「時をかける少女」は、そう始まります。小説の連載が始まったのは1965年のことですが、今でも「時かけ」で通じるほど時代を超えた人気作品となっています。

ラベンダー(lavender)は、地中海地方原産のシソ科の植物。古くから、からだを洗うときや傷口を消毒するときなどに用いられていたことから、「洗う」という意味のラテン語「lavare」にちなんで名づけられたと伝えられています。
精油(よい香りをもつ物質を含んだ揮発性成分)の含有量が多く、酢酸リナリル、リナロール、酢酸ラベンディルなど様々な芳香物質が一緒になり、あの独特の香りを作り出しています。しかもその香りには、気持ちを落ち着け、眠りを誘う作用が。「時かけ」の作者は、ここにヒントを得てラベンダーを選んだのかもしれません。

最近は、アロマオイルも手に入りやすくなり、そのときの体調や状況に応じて香りを使い分けている人も多くなりました。ラベンダーは、眠れないときやイライラするとき、リラックスしたいときなどに、お風呂に4~5滴垂らして入浴したり、お湯を入れたマグカップに2~3滴落として部屋に置いたりするとよいといわれています。
ただし、肌に直接使った場合、人によっては接触性皮膚炎(いわゆる「かぶれ」)を起こすことがあります。使用後、かゆみや湿疹などがみられた場合はすぐに洗い流し、症状が続くときは早めに受診するようにして下さい。また、商品に表示されている目安量(使用量、希釈濃度など)を守って使いましょう。

ラベンダーはハーブティーやサプリメントとして摂取されることもあり、軽い不眠やうつ症状、神経性の胃炎などの改善を助けるともいわれています。毎日のストレス解消や病気の予防に、役立てたいところですが、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などの作用に影響を及ぼす可能性も指摘されています。すでに治療を受けている場合は、医師・薬剤師に相談を。

北海道の富良野から美瑛にかけて広がるラベンダー畑。7月上旬から咲き始めた青紫色の花は、ちょうど今、最盛期を迎えているそうです。時をかけてみたくなりますね。