海洋深層水

 「海の賜(たまもの)」という名前から、どんな商品を想像しますか。「海の~」というくらいですから、やっぱり海産物?いえいえ、実はこれ、納豆の商品名です。しかも今年の全国納豆鑑評会の小粒・極小粒部門で優良賞に輝いた逸品。商品名は、北海道産の大豆を、伊豆の海洋深層水につけて発酵させたところに由来し、納豆独特のにおいは控えめ、粘りが強いという特長があるそうです。

ここ1、2年で広く知られるようになった海洋深層水。一般には、海面からの深さが200メートル以上のところにある海水のこと。この深さになると、太陽の光は届かず、真っ暗。魚はもちろん、植物プランクトンもほとんど存在していません。生活排水や川の汚れなどによる水質汚染の影響も受けにくく、一年を通して水温は低く保たれています。
無機塩類(カリウムやマグネシウム、カルシウムなどのミネラル)の量は、海面に近いところの海水よりも多く、その割合(ミネラルバランス)は、どの海域から取水した海洋深層水であっても、ほぼ同じ、といわれています。ただし、飲料水として販売されるときには、塩分が取り除かれ、飲みやすいようにと、メーカーがミネラルの含有量を調整することがあるため、商品ごとのミネラル量は異なります。それでも普通の水に比べると、全体的にミネラルの含有量は多く、スポーツで汗をかいた後の水分補給などにはよさそうです。

しかし、ビスホスフォネート系薬剤(骨粗鬆症治療薬)やニューキノロン系抗菌薬、テトラサイクリン系抗生物質などの薬を、こういった水で服用すると、薬の成分とミネラルがくっついて吸収されにくくなってしまうことが考えられます。これらの薬をのんでいるときだけでなく、何か薬を服用するときには、普通の水でのむようにしたほうが安心です。
インターネットで海洋深層水のサイトを開くと、「高血圧が治った」「アトピーがよくなった」などの文字が躍っていることがあります。確かに、カリウムには血圧を下げる働きがあります。マグネシウムは便通の改善に役立ちますし、便秘がよくなれば吹出物も少なくなるかもしれません。でも、高血圧やアトピーを治すというところまではちょっと言い過ぎでは・・・。あくまでも飲料水として、おいしい水を楽しむような感覚で利用していただければ、と思います。

海洋深層水に含まれるミネラルの割合は、私たち人間の体液とよく似ているといわれます。生命の起源は海、という言葉を思い出します。久米島での海洋深層水を利用したエビや海ブドウの養殖。細菌がいない水だから抗生物質もいらないとの、見学したときの説明を思い出しました。深さ200m以上の海の水、海の水からいえば95%が海用深層水。まだまだ活用の幅は広がっていきそうです。