サフラン

 0.5gで545円。スーパーの香辛料コーナーで、こんな商品を見つけました。シナモン(スティック)は8gで275円、ナツメグは15gで195円・・・一緒に並んでいる他の商品と比べると、ダントツの高さです(商品はいずれもS&Bスパイス&ハーブシリーズ。税別)。この高額商品の正体は、サフラン。パエリアやブイヤベースに、鮮やかな黄色と独特の風味を与えてくれる香辛料として知られています。

サフランはアヤメ科の植物。9月に球根を植えると、10~11月にかけて薄い紫色の花を咲かせます。その花の中心部には、黄色いおしべが6本と赤いめしべが1本。そのめしべの先端(柱頭)が、香辛料や染料、医薬品やサプリメントとして利用されています。
 1つの花から得られる柱頭は、わずかに0.1~0.2gほど。1kgの柱頭を得るためには10万個以上もの花を必要とします。しかも、収穫はすべて手作業で。希少価値の上、手間もかかるため、高価な商品となっているのです。

カロチノイド色素の一種であるクロシンや苦味を示すピクロクロシン、精油などを含むサフラン。古くから、女性によい民間薬としても重宝されてきました。血行をよくする作用、月経を促す通経作用、気持ちを落ち着ける鎮静作用などがあり、冷え症や血色不良、月経不順や月経困難、更年期のイライラや不眠などによいといわれます。現在でも、一般用医薬品として冷え症や血行不良の改善薬として使用されたり、女性用薬に、他の生薬とともに配合されているほか、女性向けのサプリメントや健康茶などにも加えられていることがあります。サフランにホワイトリカーを加えて2~3ヵ月熟成させたサフラン酒は、かぜの予防によいともいわれます。ベニバナをサフランと偽って販売されていることもありますので注意が必要です。

使用にあたっての注意としては、服用量や摂取目安量を守って摂取する範囲であれば、問題になることはまずないと思われますが、サフランを単独で用いる場合は注意が必要です。1日に5g以上摂取すると、出血や黄疸様症状、吐き気、めまいなどの副作用が出やすくなり、12~20gでは死に至るおそれもあります。また、子宮を収縮させる作用があるため、妊婦さんが大量に摂取すると流産の危険があります。妊娠中は、医薬品やサプリメントでの摂取は避けて下さい。

秋に、紫色の花をつけるイヌサフランにも注意が必要です。見た目の名前もサフランとよく似ていますが、こちらはユリ科の植物。痛風の薬としても使われるコルヒチンを含み、誤って食べると激しい下痢や嘔吐、発熱、呼吸困難などの中毒症状を起こすことがあります。とてもきれいな花ですから、見て楽しむだけにしておきましょう。