白金ナノコロイド

 金華豚、三元豚、東京X・・・最近は、豚肉もブランド人気。さまざまな銘柄豚が知られるようになりました。岩手県花巻市の、ある養豚場で飼育されているのは「白金豚」。この名前は、同市出身の童話作家・宮沢賢治が書いた、こんな一文に由来するそうです、「水や藁を食べて、上等な脂肪や肉にこしらえる。豚のからだは、生きた一つの触媒だ。白金と同じことなのだ」。

触媒―その物質を使うと、化学反応が活性化されるのに、その物質そのものはまったく変化しないもののことをいいます。白金は、その代表選手。高価な宝飾品というイメージもありますが、触媒として、排気ガスの浄化装置や燃料電池などに広く利用されています。近ごろはあまり見かけない白金カイロも、白金の存在があるからこそ、一定の温かさを長時間保つことができるのです。
白金はまた、食品添加物(製造用剤)としての使用も認められています。その粒子を小さく小さく・・・粒径2ナノメートル(nm)程度まで小さくして、ポリマー(重合体)でコーティングしたものが、「白金ナノコロイド」です。ナノは、1mmの100万分の1。"ミクロの世界"のさらに1000分の1。インフルエンザウイルスは80~120nmですから、それよりもさらに小さいことになります。

以前から、白金に抗酸化作用があることは知られていましたが、ナノ化することで、その抗酸化作用は強まるとされ、「老化防止によい」「はりのある肌に」などとしてサプリメントや飲料水、化粧品などに利用されています。
コエンザイムQ10やビタミンEなど、他の抗酸化物質と一緒に摂ると作用は相乗的に向上するともいわれ、喫煙による気道の炎症を緩和する、メタボリックシンドロームによる心血管系の障害を改善するといった報告もありますが、現在は、まだ動物実験のレベル。また、「食品添加物としての使用が認められている、安全性の高い成分」と説明されることもありますが、通常の食品添加物に使われるのはナノ化されていない白金。粒子の小さい白金ナノコロイドは、消化管から吸収されやすくなる可能性があります。サプリメントの場合は、継続して摂取することにもなりますから、「安全と言い切るにはデータが少ない」と注意を呼び掛ける研究者もいるようです。

「白金はサビない→体内をサビつかせない→若さを保つ」という広告はとても魅力的。そうあってほしいとも思うのですが・・・少なくとも、たくさん摂ったから、さらに若返るということはなさそうなので、サプリメントに表示されている1日の摂取目安量を守って利用するようにしましょう。
まわりに影響を及ぼしながらも、自分自身は何も変わらない―白金の"触媒人生"その影響が良いことばかりだといいのですが・・・。