葉酸 part2

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第4回目は、葉酸です。名前に「ビタミン」とはついていませんが、ビタミンB群の仲間。健康な赤ちゃんを産むため、また、健康な生活を送るためには欠かせない栄養素です。


 葉酸は、体内で細胞がつくられるときになくてはならない存在です。特に妊娠初期の神経管が形成される時期には不可欠とされ、葉酸が欠乏すると、胎児に無脳症、二分脊椎、髄膜瘤などが発現しやくすなるおそれがあります。口唇・口蓋裂、先天性心疾患などのリスクも高まるといわれ、1999年、当時の厚生省は、妊娠可能な女性等に対して、神経管閉鎖障害の発症リスクを低減させるために、葉酸の摂取を呼びかける通知を出しています。

 しかし、2007年に、「葉酸と母子(ははこ)の健康を考える会」が20~40代の女性を対象に行った調査によれば、「葉酸が妊娠期の女性に特に重要な栄養素であることを知っている」と答えたのは、子どものない既婚女性で26%、未婚女性では18%。厚生省からの通知が出された後に出産をした女性でも58%、実際に摂取した人は25%と、残念な結果が出ています。

 「食事摂取基準(2010年版)」における葉酸の推奨量は、12歳以上の男女では1日240μg。これは2005版の値と同じです。平成20年国民健康・栄養調査の結果を見ても、ほとんどの年代でこの値をクリアしていますが、妊娠前後3ヶ月の女性についての先の旧厚生省通知では、サプリメントなども利用して1日0.4mg(400μg)を摂取するように呼びかけており、今回の食事摂取基準でも「神経管閉鎖障害発症予防量として0.36mg(平滑化して0.4mg)」としています。

 ここで妊娠前後3カ月とされているのは、脊椎と脳の原型は、妊娠初期(5~6週目)にできてしまうため、妊娠が分かってからあわてて摂取しても間に合わないことも考えられるからです。「“赤ちゃんがほしいなぁ”と思ったら葉酸を」。多くの人に知って、実行していただきたいと思います。

 なお、てんかんの薬(フェノバルビタール、フェニトインなど)を長期に服用している女性の場合、体内の葉酸量が少なくなっていることがあります。その場合は、医師と相談して、医師の指示のもとで、葉酸の補充を行うことが大切です。

 しかし、葉酸が必要なのは、若い女性だけではありません。動脈硬化の危険因子といわれるホモシステインを減らす働きがあるともいわれ、葉酸の栄養状態を常に良好に保つことは、血清ホモシステイン濃度を一定値以下(14μmol/L未満)に維持することにつながると言えることから、心血管疾患・脳血管障害のリスクを減らすと考えられています。これらのことから、中高年の方にもとっていただきたいビタミンの一つでもあるのです。過剰摂取にならないように気をつけて、摂取目安量の範囲で摂るように心掛けたいビタミンです。