ビタミンD part2

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第5回目は、ビタミンDです。ビタミンCやビタミンB群と比べると、ちょっと地味な印象のビタミンですが、子供のころ肝油ドロップ(ビタミンAとビタミンD)でビタミンDを摂っていた方もいらっしゃるのではないでしょうか。


 ビタミンDの役割は、カルシウムの吸収を助けることと、体内のカルシウム濃度を調節すること。カルシウムだけをたくさん摂っても、ビタミンDがないと、丈夫な骨はつくられないのです。ビタミンDは肝臓と腎臓で活性型に変化して体の中でその作用を発揮します。活性型ビタミンD製剤は、医療用医薬品として骨粗鬆症の治療に用いられていますし、一般用医薬品やサプリメントのカルシウム剤の中にも、ビタミンDを配合した商品が少なくありません。

 平成20年の国民健康・栄養調査結果によれば、ビタミンDの摂取量は、20歳以上の男性で9.0μg、女性で7.6μg。食事摂取基準における目安量は、18歳以上の男女で5.5μgですから、十分に満たしていることになります。しかし、一方では、高齢者のビタミンD摂取量は少ないとする指摘もあります。確かに、欧米では、高齢者は若い人より2~3倍多くビタミンDを摂るべきといわれ、51~70歳で10μg、70歳以上では15μgの摂取が勧められているところもあるようです。

 人種差や食習慣の違い、日照時間の違いなど、さまざまな要素がありますから、一概に「日本の基準は低すぎる」とは言いきれません。しかし、体内でつくられるビタミンDの量は、年齢とともに減っていきます。また、勤務が夜間の人、家にこもりがちな人、長期にわたって入院している人、完璧なUVケアでほとんど日光を浴びない人などでは、不足していることも考えられますから、1日に10分~20分くらいは、散歩や息抜きを兼ねて日光を浴びるようにするとよいでしょう。

 ビタミンDの役割は、この連載の第201回でも紹介したように骨を丈夫にするだけではないことが、わかってきました。がん細胞などの増殖抑制、副甲状腺ホルモンやインスリンなどのホルモン分泌の調節,免疫調節作用などいろいろ報告があります.さらに近年では、血圧について、血液中のビタミンD濃度と高血圧発症の関係をみると、ビタミンDの濃度が低いほど、高血圧のリスクが高まるというデータがあります。


 ビタミンD→肝油→紫外線→くる病・・・。なんだかレトロなイメージになるビタミンDですが。ビタミンD→高血圧リスクの低減・・・。なんていったらぐっと話題のビタミンに変身してしまいそうです。さまざまな働きをしていることが明らかになりつつあるビタミンD。その本当の姿はどんなものか・・・・研究の成果が待たれます。