ビタミンB12 part2

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第9回目は、ビタミンB12です。鮮やかな赤色をしたビタミンとしても知られていますが、私たちの体内ではどのような働きをしているのでしょうか。


 ビタミンB12は、構造中にコバルトを含む化合物でシアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン、スルフィトコバラミンなどがあります。葉酸とともに造血機能に関与しており、不足すると正常な赤血球がつくられなくなるため、悪性貧血(巨赤芽球性貧血)を起こすことが知られています。また最近では、葉酸やビタミンB6とともに、動脈硬化の危険因子であるホモシステインの血中濃度を低下させる働きもしています。動脈硬化の予防ということ意味でも、ビタミンB12は大切な役割を果たしているのです。さらに、傷ついた末梢神経を修復する作用もあるとされ、一般用医薬品の中には、「肩・首すじのこり、腰痛、神経痛、手足のしびれ」によいとうたったビタミンB12含有製剤もあります。疲れ目等の目薬にも含まれており、赤い色の目薬はビタミンB12の色なのです。

 さまざまな働きをしているビタミンB12。1日に必要とされている量は、食事摂取基準では、最も安定なシアノコバラミン相当量で表されており、その推奨量は、18歳以上の男女で2.4μgとされています。平成20年国民健康・栄養調査の結果をみると、20歳以上の男性は7.9μg、女性は6.4μgとなっていますから、通常の食事を摂っている限り、不足することはないといわれています。逆に、大量に摂取すると、吸収率が低下することが知られていますから、バランスのとれた食事の中で摂るのがよいでしょう。

 ただし、ビタミンB12は、牛・豚・鶏などの肉類、サンマやイワシ、カキ、アサリなどの魚介類に含まれ、野菜などには含まれず、海苔(微生物が合成しているため)に含まれている程度ですから、動物性食品を一切食べない厳格な菜食主義者(ベジタリアン)の方ではビタミンB12欠乏が起こる可能性があると考えられます。

 また、胃酸が出ない無酸症の人、胃を摘出した人でも、ビタミンB12の不足がみられることがあります。これは、ビタミンB12が消化・吸収されるとき、胃酸に含まれる内因子の存在が不可欠なためです。ビタミンB12は、肝臓にある程度蓄積されていますから、すぐに欠乏症(悪性貧血や神経障害など)が出るわけではありませんが、無酸症の状態が長く続いている人、胃を摘出して何年もたつ人、胃酸の分泌を抑える薬を長期間服用している人などは、主治医と相談の上、ビタミンB12の一般用医薬品やサプリメントなどを利用してもよいかもしれません。


 1mgにも満たない量で、重要な働きをしているビタミンB12。ビタミンCのように意識して摂取されることは少ないと思いますが、目薬の赤い色を見たら、ビタミンB12を思いだしてみて下さい。