マンガン

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第19回目は、マンガンです。マンガンといえば、マンガン乾電池を思いうかべる方も多いかも知れません。最も古くから使われている乾電池で、時計に懐中電灯やガスコンロなどいろいろなところで御世話になっています。このように日常生活の中で役立っているマンガンですが、私たち人間のからだにとっても不可欠な微量ミネラルの一つでもあります。


 マンガンは、地球上に広く分布している銀白色の金属。成人の体内には、12~20mgのマンガンがあるといわれています。ごくわずかな量ではありますが、体内ではほぼ一様に分布し、特にミトコンドリア(細胞小器官の一つで、エネルギーを産生する場)に多く存在することが知られています。

特にマンガンスーパーオキシドジスムターゼ(MnSOD)などの酵素の構成成分として、知られています。体内で作られるスーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、細胞のミトコンドリア内に存在する酵素。発ガン、老化、動脈硬化、痴呆等の原因の一つとされるフリーラジカルを中和する働きを持つ酵素で、これらの疾患の予防に欠かせない酵素といえます。この他にもマンガンは酵素構成因子や、さまざまな酵素の反応を助ける役割も担っています。骨の形成にも欠かせないミネラルでもあり、カルシウムが骨に沈着する際にはマンガンの働きが必要とされています。

 マンガンの吸収は鉄と競合するため、食事中の鉄の含有量が高いとマンガンは吸収されにくくなるという関係があります。貧血などで鉄剤を使用する場合はマンガンに対して注意が必要になるということです。

 食事摂取基準における目安量は、18歳以上の男性で4.0mg、女性では3.5mg。耐容上限量は男女とも11mgとされています。マンガンが欠乏すると、骨の成長や運動機能、皮膚などに異常がみられるといわれています。しかし、穀類、豆類、種実類といった植物性食品を中心に多くの食品に含まれていることから、一般的な食事をしている限り、欠乏することはまずないとされています。消化管からの吸収率は約3~5%と低いため、過剰症の心配もほとんどないとされていますが、鉱山で働く人やマンガンを多く含んだサプリメントや生薬製剤を摂取した人でマンガン中毒を生じ、パーキンソン病に似た中枢神経系の異常がみられたとする報告があります。


 マンガンに限らず、どんなときにもミネラルの摂取はバランス感覚を持って、体に良いと思って一種類のミネラルを過剰に摂ることは危険な場合があることを忘れないで下さい。