リン

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第20回目は、リンです。サプリメントなどとして積極的な摂取が勧められることはありませんが、からだの組織や細胞を構成する要素として、また、からだの機能を正常に保つ元素として、欠かせない存在となっています。


 リンは、私たちの体内に最大で850gあるといわれ、そのうちの約85%はカルシウムやマグネシウムとともに、骨や歯に存在しています。

残りの15%ほどは、リン脂質という形で細胞膜をつくっているほか、遺伝情報を担っているDNA(デオキシリボ核酸)やRNA(リボキシ核酸)の構成成分ともなっています。さらには、ATP(アデノシン三リン酸)としてエネルギーの代謝や貯蔵に関わるなど、細胞の生命活動においても重要な役割を果たしています。

 平成20年国民健康・栄養調査の結果によると、日本人の1日のリン摂取量は、20歳以上の男性で1059mg、女性で913mg。食事摂取基準による目安量は、18歳以上の男性で1000mg、女性で900mg、耐容上限量は男女とも3000mgとなっています。

 一般的な食事をしている限り、リンが不足することはまずありません。むしろ、加工食品の食品添加物や清涼飲料水の酸味料などとしてリン酸塩が広く使われていることから、現代の食生活においては、リンの過剰摂取になりやすい状況にあります。摂取量に関しての調査では、食品添加物中のリンなどは含まれていませんから、それを含めればリンの過剰摂取は確かに問題といえます。

 血液中のリン濃度は、カルシウムと同様、副甲状腺ホルモンによってコントロールされていますが、リンを大量に摂取すると、このホルモンの濃度が上昇することが知られています。また、リンの過剰摂取はカルシウムの腸管からの吸収を抑制することが知られています。スペインの報告では、Ca/P 比0. 74 以上では、それ以下に比べて骨密度が有意に高いといった報告もありますからリンとカルシウムのバランスも重要です。


 どうしても、カルシウムの摂取量が不足しやすく、リンの摂取量が多くなりがちな私たちの食事。カルシウムを積極的に摂るように努めると同時に、加工食品に頼り過ぎない工夫をすることも大切です。