ナイアシン

 「日本人の食事摂取基準(2010年版)」を参考にして栄養素の摂取量などを紹介していく第25回目は、ナイアシンです。これは、ニコチン酸とニコチンアミド(ニコチン酸アミドともいう)の総称。タバコに含まれるニコチンと似た構造をしていることから、このような名称がつけられましたが、作用はまったく異なります。


 ナイアシンは、私たちの体内では、主にNAD(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド)やNADP(ニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸)と呼ばれる補酵素として存在。糖質や脂質、蛋白質などの代謝に関与しています。また、皮膚や粘膜を健康に保つ働きをしているともいわれています。

 欠乏すると、皮膚炎や認知症様症状、下痢などの症状を呈するペラグラ(イタリア語で“荒れた皮膚”という意味)になることが知られています。日本人では、ナイアシンの欠乏症がみられることはほとんどありませんが、諸外国でトウモロコシを主食とする地域やアルコール摂取量の多い人で欠乏症になりやすいといわれています。

 一方、ナイアシンを大量に摂取した場合、ニコチン酸による顔面紅潮がみられることがあります。これはニコチン酸の血管拡張作用によるものですが、このような理由もあり、サプリメントなどのナイアシンには、ニコチンアミドが用いられることが多いようです。

 ナイアシンは、体内において、トリプトファン(必須アミノ酸の一つ)からもつくられます。60mgのトリプトファンが、1mgのニコチンアミドになることから、食事摂取基準などで示されているナイアシン当量(mgNE)は、「ニコチン酸(mg)+ニコチンアミド(mg)+1/60トリプトファン(mg)」で求められています。

 その食事摂取基準による推奨量は、18歳以上の男性で13~15mgNE、女性は10~12mgNE。耐容上限量は、男性300~350(ニコチン酸は75~85)mg、女性250(同60~65)mgとされています。平成20年国民健康・栄養調査によると、1日のナイアシン摂取量は、20歳以上の男性で17.0mgNE、女性で13.8mgNEという結果で、男女とも推奨量を満たしていることがわかります。


 ナイアシンは、血清尿酸値を上げる(尿細管で尿酸の再吸収促進作用など)ことが知られていますから、痛風の患者さんのナイアシンの過剰摂取に対しては注意が必要です。