食後の薬

 ドラッグストアショーでの薬のクイズの回答と解説の3回目です。「食後服用の薬。忙しくて食事がとれなかったので、のまなかった。○か×か」。正解は×です。たとえ食事がとれなかったとしても、原則として薬はその時間にのむようにしましょう。

 「食後30分以内にのみましょう」。OTC薬、処方薬を問わず、多くの薬がこういったのみ方を指示されているはずです。 なぜ、食後にのむ薬が多いのかというと、まず、食物が胃に残っているために、胃を荒らすことがある薬ではそれを避けることができるというメリットが挙げられます。また、糖尿病の薬のように食事中の糖の吸収を抑えるものでは、薬の服用のタイミングは、食事と密接な関係があります。

 ところで食事をすると胆汁酸が分泌されますが、EPA製剤など、油のような性質の薬の吸収には胆汁酸が欠かせません。そのため、吸収のことを考えて食直後の服用が指示されます。ただし、食後服用の薬には、食物と一緒にとることでより吸収のよくなるものがある反面、食物が吸収を妨げてしまうものもあります。たとえばアスピリンは、食物によって吸収が遅れ、効きめが低くなることが知られています。つまり、本当は空腹時にのんだほうが効くのに、胃への副作用を重要視して食後服用にしているわけです。

 でも食後の指示で一番多い理由は、薬をのむという行為を食事と組み合わせれば、のみ忘れもしにくいだろうということです。

 血圧の薬などは胃を荒らす作用も少ないことから、食後の指示であっても、食事をしなくても薬はのんでいただきたいのです。ただ、先にも紹介したように、食事をしないで血糖値を下げる糖尿病の薬をのむと、食事から吸収される糖がないわけですから低血糖のような副作用が引き起こされる可能性があり、注意が必要です。食後に服用と指示されたら、食事ができないときはどうしたらよいでしょうかと、確認する習慣をつけてください。

 ところで、医療用医薬品では少なくなってきましたが、OTC薬の多くは1日3回毎食後という服用方法が指示されています。朝は食事抜きで、お昼はうどんかおそばを軽く食べ、夕食は深夜に食べるといったような場合、風邪薬のような症状を抑える薬については、朝は食事しなくても薬をのみ、昼食後に昼の薬を、さらに夜の薬は夕方というように、起きている時間にある程度継続的に効いてくれるよう等間隔になるように服用することが望まれます。

 朝や昼間ののみ忘れが多いことから、最近は1日1回の服用で済む薬も多くなってきました。ところが高齢な方の中には、薬は1日3回のむものであると意識付けされてしまっているからか、1日3回服用し続けた方がいらっしゃいました。思い込み。怖いですよね。

 服用回数と服用のタイミングは、薬ごとに理由が異なります。薬を受け取る時、あなたが服用する薬の食後の意味は何かを確認してみてください。