車の運転と薬

 私たちの体が覚醒(目ざめている)状態を保つのに重要な役割をしているのがヒスタミン。このヒスタミンの働きを抑えるのが抗ヒスタミン薬。そこで、抗ヒスタミン薬を服用して、この成分が脳に入ってその作用を示せば、副作用として眠気が引き起こされます。風邪薬や、鼻炎用薬などに含まれていますから、眠気に対する注意が必要です。これらのOTC薬の添付文書には、「服用後,乗物又は機械類の運転操作をしないでください(眠気等があらわれることがあります。)」と、記載されています。

 抗ヒスタミン薬による眠気ですが、これはあくまで脳に入っての作用による問題ですから、脳に移行しない抗ヒスタミン薬は眠気を引き起こさないということになります。花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる鼻のアレルギー症状(くしゃみ,鼻みず,鼻づまり)の緩和に用いられる、フェキソフェナジン(アレグラ)は、眠気への影響がない薬として知られ、非鎮静性抗ヒスタミン薬として位置付けられています。車の運転への影響がないことも確かめられており、添付文書には、先に記したような運転操作への注意事項は、記載されていません。抗ヒスタミン薬といっても、眠気が強い薬、軽い薬、影響ない薬と色々ですから、薬剤師や登録販売者に確認される事をお勧めします。

 ところで、今年5月29日。厚生労働省から、「医療用医薬品服用中の自動車運転等に関する患者への説明について」という通知が出されました。この通知は、総務省の「医薬品等の普及・安全に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」に基づき出されたものです。医薬品の副作用による保健衛生上の危害の防止する観点から、添付文書の使用上の注意に自動車の運転等の禁止と記載されている医薬品に関して、医療関係者は、患者に注意喚起を行うべきとするものです。

 確かに、ごもっとも。と、言いたいのですが・・・。実は、これが大問題。例えば、睡眠薬。服用されている方も多いですよね。車の運転についての注意は、確かに服用後、眠くなるのはあたりまえ。睡眠薬を飲んでから運転なんてしませんよ。と、思われるかもしませんが、睡眠薬(超短時間作用型:睡眠薬の作用時間が短い薬)の添付文書の、使用上の注意事項には、「本剤の影響が翌朝以後に及び、眠気、注意力・集中力・反射運動能力等の低下が起こることがあるので、自動車の運転等危険を伴う機械の操作に従事させないよう注意すること。」と、記載されています。

 この内容を、正確に患者さんに伝えるとしたら、「睡眠薬を服用した翌日は、車などの運転はしないでください」といった説明になります。添付文書に忠実に・・・。車の運転をしないでください。と、伝えたら、それでも車を運転できないと困るからと、患者さんの判断で運転して事故が起きたら自己責任。本当に、運転してはいけない薬、個人差があり人によって眠気への影響が異なるものなど、現在の添付文書の内容を整理してから通知を出してくださいよ。と、思わず言いたくなります。