ホスファチジルセリン

 コンビニで、時々見かける「頭脳パン」。何となく気になる存在です。このパンは、40年以上前に発売されたそうですが、毎年、受験シーズンになると、売り上げが伸びるのだとか。
 頭脳パンの特長は、ビタミンB1を多く含む小麦粉を使っていること。ビタミンB1は、炭水化物がブドウ糖に代謝されるときに必要な栄養素で、脳が利用できる唯一のエネルギー源がブドウ糖ですから、理にかなっているということになるのでしょうか。

 近ごろは、からだだけでなく、脳にも栄養を、ということなのか、「ブレイン・フード」という言葉を耳にすることが多くなりました。脳の働きをよくすると考えられる食べ物・サプリメントのことで、ホスファチジルセリンもその一つとされています。
 耳慣れない名前かもしれませんが、実は身近な存在で、私たちのからだをつくっている細胞1個1個の膜を構成している成分。特に脳や神経組織に多く存在しています。
 膜といっても、細胞を包んでいるだけではありません。栄養素と酸素を細胞に届け、不要となった老廃物を回収し、排泄する・・・小さな小さな細胞の内と外で、こうした物質の出入りがスムーズに行われているのは、ホスファチジルセリンの存在があればこそ。
 さらに脳では、脳細胞と脳細胞の情報のやりとりを活発していると考えられ、脳内の血流をよくするともいわれることから、ホスファチジルセリンを摂ると「頭の回転がよくなる」「記憶力がアップする」などといわれるようになったようです。
 一文字違いの成分に、ホスファチジルコリンがあります。どちらも、リンを含む脂質の仲間で、同じような性質をもっているのですが、こちらはレシチンとも呼ばれ、主に神経伝達物質であるアセチルコリンの原料として利用されます。
 今のところ、ホスファチジルセリンについては、問題となるような相互作用は知られておらず、安全性は比較的高いといわれています。実際にホスファチジルセリンを摂取したアルツハイマー症や認知症のお年寄りでは、当初は症状の改善がみられたものの、過剰摂取や長期摂取によって、その“効果”が弱まったとの報告もあります。期待したい成分ではありますが、わかっていない点もありますから、摂り過ぎにならないようにご注意を。

 頭脳パンを紹介する新聞記事の中で、メーカーの方が、こんなふうにお話をされていました、「ご本人様が勉強しないと、頭はよくなりません。勉強のおともに頭脳パンを食べて、一生懸命勉強して下さい」。やはり、これが一番の早道でしょうか。